海外で日本のVPNを利用するとき、一般的にはパソコンやスマートフォンにVPNを設定して接続します。
しかし、家族で海外生活をしていると、
「家族のスマートフォンやタブレットにもVPNを設定したい」
「VPNアプリを入れにくい機器でも使いたい」
「毎回それぞれの端末からVPNへ接続するのが面倒」
と感じることがあります。
このような場合に便利なのがVPNルーターです。
VPNルーターを利用すると、ルーター自体をVPNサーバーへ接続し、そのルーターにつながっている複数の端末からVPN経由でインターネットを利用できるようになります。
私自身、シンガポール駐在中に日本のインターネット環境が必要になったことをきっかけにVPNを利用するようになり、現在は海外在住の日本人向けにuseusdVPNを運営しています。
この記事では、VPNルーターとはどのようなものなのか、通常のVPN接続との違い、海外生活で利用するメリット、選ぶ際の注意点について解説します。
VPNルーターとは?
VPNルーターとは、VPNへ接続する機能を持ったルーターです。
通常VPNを利用する場合は、
パソコン
↓
VPNサーバー
↓
インターネット
というように、パソコンやスマートフォンなどの端末から直接VPNサーバーへ接続します。
一方、VPNルーターを利用すると、
パソコン・スマートフォン・タブレットなど
↓
VPNルーター
↓
日本のVPNサーバー
↓
インターネット
という通信経路になります。
つまり、それぞれの端末ではなく、ルーターが代表してVPNへ接続するイメージです。
海外から日本国内のVPNサーバーへ接続するように設定しておけば、VPNルーターにつながった端末は日本のVPNサーバーを経由してインターネットへアクセスできます。
普通のWi-Fiルーターとの違い
ここで注意したいのが、
Wi-FiルーターならどれでもVPNルーターとして利用できるわけではない
という点です。
家庭用ルーターの中には、「VPN対応」と書かれている製品があります。
しかし、この「VPN対応」という言葉だけでは十分ではありません。
VPNには大きく分けて、
VPNサーバー機能
と
VPNクライアント機能
があります。
海外から日本のVPNサービスへルーター自体を接続したい場合に必要なのは、基本的にVPNクライアント機能です。
VPNサーバー機能しか搭載していないルーターでは、目的の使い方ができない場合があります。
そのためVPNルーターを購入するときは、「VPN対応」という表示だけではなく、VPNクライアントとして利用できるかを確認することが重要です。

VPNルーターを海外で使うメリット
VPNルーターはすべての人に必要なものではありません。
パソコンやスマートフォン1台だけでVPNを利用するなら、端末から直接VPNへ接続した方が簡単な場合もあります。
一方、海外生活ではVPNルーターが便利になるケースがあります。
家族の複数端末をまとめてVPNへ接続できる
海外赴任などで家族と一緒に生活している場合、自宅には多くのインターネット端末があります。
例えば、
- パソコン
- iPhone
- Androidスマートフォン
- iPad
- タブレット
- テレビ周辺機器
などです。
これら一台一台にVPNを設定すると、意外と手間がかかります。
家族がネットワーク設定に詳しいとは限りません。
VPNルーターを利用すれば、
「このWi-Fiにつなげば日本のVPN経由」
という環境を作ることができます。
家族にVPNアプリの操作方法を毎回説明する必要がなくなるのは、海外生活では大きなメリットです。

VPNアプリを入れにくい機器でも利用できる
パソコンやスマートフォンならVPNアプリやVPN設定を利用できますが、すべてのネットワーク機器がVPN接続に対応しているわけではありません。
端末側でVPNを設定できない場合でも、VPNルーターを経由させることでVPN通信を利用できる場合があります。
端末から見ると、普通のWi-Fiへ接続しているだけだからです。
これもVPNルーターを利用する大きな理由の一つです。
ただし、VPNを利用すれば特定のWebサービスが必ず利用できるという意味ではありません。
サービス側ではIPアドレス以外の情報を利用して地域などを判定している場合もあります。
VPNへの接続操作を減らせる
端末からVPNを利用する場合、
「VPNを接続する」
「利用が終わったら切断する」
といった操作が必要になることがあります。
VPNルーターを常時日本のVPNサーバーへ接続しておけば、そのWi-Fiへ接続するだけでVPN経由の通信を利用できます。
例えば、
通常のWi-Fi
と
日本VPN経由のWi-Fi
を分けて用意しておけば、用途に応じてWi-Fiを切り替えるという使い方もできます。
海外生活では、この方法が意外と便利です。
既存のルーターを交換する必要はある?
必ずしも、海外の自宅に設置されているルーターをVPNルーターへ交換する必要はありません。
既存のインターネット環境を残したまま、VPN用ルーターを追加する方法もあります。
例えば、
インターネット
↓
現地の既存ルーター
↓
VPNルーター
↓
パソコン・スマートフォンなど
という構成です。
この方法なら、
現地回線へ直接つながるWi-Fi
と
日本のVPNを経由するWi-Fi
を両方利用できます。
普段は現地のWi-Fiを使い、日本のIPアドレスが必要なときだけVPNルーター側のWi-Fiへ切り替える、といった使い方ができます。
個人的には、海外生活ではこのように通常回線とVPN回線を分けておく方が使いやすいと思います。
VPNルーターを選ぶときは「VPNクライアント対応」を確認する
先ほど説明した通り、VPNルーターを選ぶ際に重要なのがVPNクライアント機能です。
製品仕様に、
- OpenVPN Client
- WireGuard Client
- VPN Client
などの記載があるか確認します。
利用するVPNサービスによって対応する通信方式は異なるため、VPNサービス側の仕様も確認する必要があります。
「VPN対応ルーターを買ったのに接続できなかった」
ということを避けるためにも、
利用するVPNサービスを決める → 対応方式を確認する → ルーターを選ぶ
という順番がおすすめです。
ルーターを先に購入しない方が安全です。
VPNルーターでは通信速度にも注意
VPNルーターを選ぶときに、もう一つ重要なのが性能です。
ルーターの製品ページを見ると、
「最大○○Mbps」
「Wi-Fi 6対応」
など非常に高速な通信速度が書かれています。
しかし、これは必ずしもVPN接続時の速度ではありません。
VPNでは通信の暗号化などの処理をルーター側で行います。
そのためルーターのCPUなどの性能によって、VPN通信時の速度が制限されることがあります。
例えば自宅のインターネット回線が500Mbpsでも、VPNルーターがVPN通信を50Mbps程度しか処理できなければ、VPN経由ではそれ以上の速度は期待できません。
特に安価な小型ルーターでは、
通常のWi-Fi通信は高速でもVPN利用時は速度が大きく低下する
ことがあります。
VPNルーターを選ぶ場合は、Wi-Fiの最高速度だけでなく、OpenVPNやWireGuardなどを利用した場合の実効速度も確認することをおすすめします。
VPN接続時の速度については「海外からVPNを使うと遅い?通信速度が低下する原因と改善方法」でも詳しく解説しています。
OpenVPNとWireGuardでは速度が違う?
VPNルーターではOpenVPNやWireGuardなど、複数のVPN方式に対応している製品があります。
一般的には、方式によって通信速度や処理負荷に違いがあります。
ただし、
WireGuardなら必ず速い
OpenVPNなら必ず遅い
と単純に判断することはできません。
VPNサーバー側がその方式に対応している必要がありますし、利用する国やインターネット回線、ルーター性能なども影響します。
VPNルーターを購入する際は、
「どのVPN方式に対応しているか」
だけでなく、
利用予定のVPNサービスと組み合わせて使えるか
を確認してください。
GL.iNetのようなVPN向けルーターもある
VPNクライアントとして利用しやすいルーターの一つとして、GL.iNet製品があります。
小型のトラベルルーターを含め、OpenVPNやWireGuardのクライアント機能を搭載したモデルが多く、VPN用ルーターとして利用しやすいのが特徴です。
useusdVPNでも、GL.iNet製ルーターを使った設定について紹介しています。
ただし、GL.iNetであればどの機種でも同じ性能というわけではありません。
モデルによって、
- CPU性能
- Wi-Fi性能
- OpenVPNの処理速度
- WireGuardの処理速度
- LANポート
- 電源方式
などが異なります。
購入する場合は価格だけでなく、VPN利用時の性能を確認した方がよいでしょう。
海外赴任前にVPNルーターを準備するメリット
これから海外赴任する場合は、日本にいるうちにVPNルーターを準備しておく方法もあります。
海外へ行ってから、
「どのルーターを買えばいいか分からない」
「現地で欲しいモデルが売っていない」
「設定方法が分からない」
となるより、日本にいる間に一度設定しておけば安心です。
特に家族で赴任する場合は、
- VPNルーター
- パソコン
- スマートフォン
- タブレット
など、実際に海外へ持っていく機器で一度接続テストをしておくとよいでしょう。
ただし、最終的な通信速度や接続状況は海外の現地回線によって変わります。
日本で正常に動いたからといって、海外でもまったく同じ通信環境になるわけではありません。

VPNルーターのデメリット
便利なVPNルーターですが、デメリットもあります。
設定が少し難しい
パソコンやスマートフォンのVPNアプリと比べると、ルーターの設定画面から接続情報を入力したり、設定ファイルを読み込んだりする必要があります。
ネットワーク設定に慣れていない人には少し難しく感じるかもしれません。
すべての通信がVPN経由になる場合がある
VPNルーターの設定によっては、接続している端末の通信がすべて日本のVPNサーバーを経由します。
海外から現地のWebサイトを利用するときまで、
海外
↓
日本
↓
海外のWebサイト
という遠回りになる可能性があります。
そのため、通常回線とVPN回線を使い分けられる環境にしておくと便利です。
VPNルーター自体が速度のボトルネックになる
先ほど説明した通り、VPN処理はルーターに負荷がかかります。
低性能なルーターを利用すると、VPNサーバーやインターネット回線が高速でも、ルーター側で速度が制限される可能性があります。
VPNルーターが向いている人
VPNルーターは、特に次のような人に向いています。
- 家族で海外生活をしている
- 複数の端末で日本のVPNを利用したい
- 端末ごとにVPN設定するのが面倒
- VPNアプリを設定しにくい機器を使いたい
- 海外赴任先の自宅に日本VPN専用Wi-Fiを作りたい
反対に、パソコンやスマートフォン1台だけで時々VPNを利用する程度なら、VPNルーターを用意する必要はないかもしれません。
端末から直接VPNへ接続する方が簡単です。

useusdVPNとVPNルーター
useusdVPNは、海外在住の日本人が日本のインターネット環境を利用することを主な目的としたVPNサービスです。
VPNルーターを利用する場合は、対応するVPNクライアント機能を持ったルーターへ接続設定を行います。
ただし、ルーターによって対応しているVPN方式や設定方法、性能が異なります。
そのため、VPNルーターを購入する前に、利用予定の機種とVPNサービスの対応状況を確認することをおすすめします。
また、VPNルーターを利用した場合でも、特定のWebサイトやオンラインサービスの利用を保証するものではありません。
サービス側の仕様や利用条件などによって利用できない場合があります。
useusdVPNでは14日間の無料期間を設けていますので、実際の海外生活環境からVPNルーターを含めた接続環境を確認してから継続することができます。
VPNルーターについてのまとめ
VPNルーターとは、ルーター自体がVPNサーバーへ接続する機能を持ったルーターです。
海外から日本のVPNサーバーへ接続するよう設定しておけば、そのルーターにつながった複数の端末から日本のVPNを経由してインターネットへアクセスできます。
海外生活では、
現地の通常Wi-Fi
と
日本VPN経由のWi-Fi
を用意して、用途に応じて使い分ける方法も便利です。
VPNルーターを選ぶときは、「VPN対応」という表示だけではなく、
- VPNクライアント機能があるか
- 利用するVPN方式に対応しているか
- VPN利用時に十分な処理性能があるか
- 利用予定のVPNサービスに対応しているか
を確認しましょう。
そして、家族で海外生活をする場合や、多くの端末から日本のVPNを利用したい場合には、VPNルーターを使うことで毎回VPNへ接続する手間を減らし、海外の自宅に「日本VPN専用のWi-Fi環境」を作ることができます。
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